企画展「常陸平氏―将門・清盛につながる一族―」でご質問が多かった事項について
※今回、回答可能なご質問に関しては個別に回答していますが、特にご質問が多かった内容については、ここで回答いたします。
ご質問内容
源頼信は「常陸守」?
回答
『今昔物語集』巻25第9話「頼信朝臣平忠恒を責めたる語」において、源頼信は「常陸守」と称されています。制度上、常陸国は大国、かつ親王任国であり、常陸守(太守)には、親王(最高位の男子皇族)が任命されました。つまり、頼信は制度上、常陸介なのです。しかし、頼信の位階は最終的に従四位上であり、武士としては、かなり出世しました。おそらく、常陸介の時期は、従五位に相当する位階にあったと考えられます。これは、親王任国ではない国ならば、十分に「守」に任命される位階です。また、常陸国は親王任国ゆえ、守(太守)たる親王は遥任(ようにん)、つまり京都に留まり、現地である常陸国に下ることはありません。つまり、現地である常陸国に居る頼信が、「守」と称しても黙認される、現地ではトップの国司でした。ですから、『今昔物語集』のような、半分フィクション的なものでは、制度的には「常陸介」であっても、「常陸守」という呼称を用いることに、異論がでなかったと考えられるのです。