春の特別展「鹿島と香取」

春の特別展「鹿島と香取」

茨城県立歴史館
 茨城県と千葉県の境界に広がる水郷地域は、中世以前には「香取海」と呼ばれる内海により、近世以降には利根川により、常陸国と下総国、あるいは茨城県と千葉県に分かれていました。
 しかし、国や県を異にしながらも、この地域は内海・利根川の沿岸社会としてひとつの文化的空間を形成していました。この要とも言える鹿島神宮・香取神宮は、『延喜式』において伊勢神宮とともに「神宮」と称された二社であり、古代より貴族や武家、漁業を生業とする人々から広い崇敬を集めてきました。また、近世においては息栖神社を含めた東国三社詣の舞台となったり、安政の江戸大地震後の世相を反映した鯰絵のモチーフになったりするなど、人々の暮らしや文化に大きな影響を与えてきました。
 令和3年には、古代の鹿島・行方・信太の各郡について多くを記す『常陸国風土記』(養老5年〈721〉とされる)の成立から1300年を迎えたほか、令和8年には鹿島神宮と香取神宮の緊密な関係性を示す12年に一度の御船祭・式年神幸祭が令和改元後に初めて執り行われることとなっており、当地域への注目が高まりつつあります。
 本展では、鹿島・香取両神宮に伝来する貴重な社宝を展示するとともに、内海ないし利根川沿岸社会における文化の諸相について様々な視点から探り、古代から現代に至るまでのこの地域の歴史的魅力に迫っていきます。

動画MOVIE

  • 香取神宮編 1

  • 香取神宮編 2

  • 香取神宮編 3

  • 鹿島神宮編 前編

  • 鹿島神宮編 後編

  • 直刀

  • 自転車編 1

  • 自転車編 2

  • 自転車編 3

見どころ

見どころ1 
国宝2件(内1件は複製)、国指定重要文化財7件を展示

鹿島神宮、香取神宮それぞれに伝来する国宝《直刀・黒漆平文太刀拵》(鹿島神宮)、《海獣葡萄鏡》(香取神宮、出陳は複製品)を展示します。《黒漆平文太刀拵》は修理後初公開となります。この他、源頼朝奉納品と伝わる《梅竹蒔絵鞍》(鹿島神宮)や、明治初年まで香取神宮に伝来した懸仏(香取市・観福寺)などの国指定重要文化財を見ることができます。

見どころ2 
一般公開初となる資料35件を含む、約160点近い資料が勢揃い

《線刻十一面観音菩薩鏡像》(鹿島神宮)や香取大宮司家関係資料など、事前の資料調査で発見、再確認された資料が出陳されます。この他、鹿島・香取両地域を知るうえで重要な、当館学芸員・研究員一押しの資料が会場を埋め尽くします。

見どころ3 
鹿島神宮・香取神宮の神宝が多数出陳

鹿島神宮・香取神宮の協力のもと、社外初公開資料を含む両神宮の神宝が多数出陳されます。
茨城における鹿島神宮展、千葉県における香取神宮展は過去に開催されていますが、両神宮の神宝がこれほど一堂に会するのは実に57年ぶりのことです。

見どころ4 
利根川の水運からみる鹿島と香取

近世以降の鹿島・香取地域について考える上で欠かせない利根川について、千葉県立関宿城博物館の資料を中心にみていきます。利根川の水運が整備されたことによって盛んになっていった東国三社詣など、当地域の文化の諸相について利根川を介して巨視的に考えていきます。

展示構成

序章 鹿島と香取の地形

中世以前の鹿島・香取の地には、「香取海」とも呼ばれる、縄文海進によって作られた内海が広がっていました。ここでは、この地域に内海が広がっていた時期、そして近世以降に利根川の流路が変化して銚子へと注ぐようになった時期の地形について紹介し、本章への序といたします。

第1章 古代の鹿島と香取

内海に面していた当地域では、縄文時代には狩猟・採取や塩つくりが行われており、古墳時代には神を祀っていました。本章では、埴輪や古代の祭祀遺跡からの出土資料などから、鹿島神宮・香取神宮が創建される以前のこの地の様子を探っていきます。

埴輪(南羽鳥正福寺1号墳)
成田市指定文化財
埴輪(南羽鳥正福寺1号墳)
古墳時代・6世紀
成田市下総歴史民俗資料館
【通期展示】

第2章 二つの神宮

鹿島神宮と香取神宮は、ともに古代において神宮と称され、伊勢神宮とならぶ社格をもちました。また、内海を挟み近在したことから、様々な共通性が見られます。本章では、両神宮の国宝をはじめとする社宝から、各々の類似性を探ります。また、両神宮の緊密性を示す、12年に一度の祭礼である御船祭・式年神幸祭についても紹介します。

直刀・黒漆平文太刀拵
国宝
直刀・黒漆平文太刀拵
奈良~平安時代・8~9世紀
鹿島神宮
【直刀:通期展示、拵:Ⅰ期展示】
海獣葡萄鏡
国宝
海獣葡萄鏡
唐または奈良時代・7~8世紀
香取神宮
※出陳は複製品
【通期展示】

第3章 利根川の水運と文化

大水上山を水源とする利根川は、中世までは現在の東京湾へと流れていましたが、17世紀になるとその下流が銚子へと遷されました。この水路の変化により、江戸と鹿島・香取間における利根川の水運を利用した人や物の移動が盛んに行われるようになりました。本章では、利根川の水運が与えた人々の暮らしや文化への影響について、旅日記や神社に奉納された絵馬などから紹介します。

高瀬船模型
高瀬船模型
千葉県立関宿城博物館
【通期展示】
利根川から筑波山を望む図
利根川から筑波山を望む図
明治11年(1878)
野田市・関宿江戸町香取神社
【Ⅰ期展示】

第4章 鹿島と香取を結ぶもの

鹿島・香取地域の特徴を反映した古墳出土資料や板碑などの石造物、両神宮における神仏習合の様相が見られる仏教美術、鹿島の武甕槌神を主要モチーフとした鯰絵、水郷の移り変わりを記録した行政文書などから、この地域に展開した歴史や文化の諸相を探ります。

神宮寺経塚出土資料
神宮寺経塚出土資料
平安時代
当館
【Ⅰ期展示】
下総型板碑
千葉県指定文化財
下総型板碑
(正元々年八月廿四日在銘)
鎌倉時代・正元元年(1259)
香取市教育委員会
【通期展示】
懸仏(釈迦如来)
国指定重要文化財
懸仏(釈迦如来)
鎌倉時代・弘安5年(1282)
香取市・観福寺
【Ⅰ期展示】
鯰絵「要石を背負う鯰」
鯰絵「要石を背負う鯰」
江戸時代・安政2年(1855)
当館
【Ⅱ期展示】

出陳一覧を見る(PDF 487KB)

開催概要

茨城県立歴史館
開催期間
Ⅰ期
 令和5年2月17日(金)~3月21日(火・祝)
Ⅱ期
 令和5年4月8日(土)~5月7日(日)
開館時間
9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日
毎週月曜日(祝日の場合はその翌日)
会場
茨城県立歴史館
〒310-0034 茨城県水戸市緑町 2-1-15
入館料
一般・・・・・・・・・・・・・・・・610円(490円)
満70歳以上・・・・・・・・・・300円(240円)
大学生・・・・・・・・・・・・・・320円(240円)
小・中・高・未就学児・・・無料
  • ※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・指定難病特定医療費受給者証をお持ちの方と付き添いの方1名は無料
  • ※()内は20名以上の団体料金
  • ※満70歳以上の方の入館無料日 3月2日(木)
  • ※茨城県天心記念五浦美術館「旅するチバラキ ~連作《水郷めぐり》の全貌~」の入場券(半券可)提示で団体料金適用
特別協力
鹿島神宮、香取神宮、千葉県立関宿城博物館
協賛
後援
NHK水戸放送局、(株)茨城放送、(株)茨城新聞社、読売新聞水戸支局、朝日新聞水戸総局、毎日新聞水戸支局、産経新聞社水戸支局、東京新聞水戸支局、鹿嶋市教育委員会、潮来市教育委員会、稲敷市教育委員会、小美玉市教育委員会、阿見町教育委員会、野田市教育委員会、成田市教育委員会、(一社)茨城県観光物産協会、(公社)千葉県観光物産協会

交通のご案内

  • ◎茨城交通バス(水戸駅北口4番のりば)
    「桜川西団地」等偕楽園方面行き乗車、「歴史館偕楽園入口」下車、徒歩2分
  • ◎常磐自動車道水戸インターチェンジから約7km、車で15分

公演会・講演会・講座

  • 鹿島と香取にまつわる民俗芸能公演会

    本公演会では、鹿島神宮の御船祭、香取神宮の式年神幸祭でそれぞれ奉納される民俗芸能の保存団体をお招きします。祭礼において神と人の目を楽しませる無形の文化財を、是非間近でご覧ください。

    日時:
    令和5年4月29日(土)13:30~
    出演:
    鹿島踊(鹿嶋市)、波崎のあばれ太鼓(神栖市)、
    多田の獅子舞(香取市)、
    武術 天真正伝香取神道流(香取市)
    会場:
    茨城県立歴史館 講堂
    定員:
    100名(事前予約、要入館券)
  • 講演会

    大正6年5月、4人の日本画家、飛田周山、水上泰生、山内多門、勝田蕉琴は、利根川を下って水郷をめぐり、さらに汽船で北浦へと向かいました。一行が旅して描いた当地の風景を紹介しつつ、この頃の水郷の様子についてお話いただきます。

    演題:
    「大正6年、水郷めぐりの旅」
    日時:
    令和5年2月25日(土)14:00~15:30
    講師:
    井野 功一(茨城県天心記念五浦美術館首席学芸員)
    会場:
    茨城県立歴史館 講堂
    定員:
    100名(事前予約、要入館券)
  • リレー講座 ①

    鹿島神宮・香取神宮は、ともに古代から貴族や武家、民衆から篤い信仰を集め、様々な品々が奉納されてきました。ここでは両神宮に伝来した宝物を幅広く「神宝」と捉え、これら多くの品々から両神宮の歴史について見ていきます。

    演題:
    「鹿島神宮・香取神宮の神宝」
    日時:
    令和5年2月26日(日)14:00~15:00
    講師:
    蔀 政人(当館学芸員)
    会場:
    茨城県立歴史館
    定員:
    100名(事前予約、要入館券)
  • リレー講座 ②

    元禄11年(1698)、時の香取神宮大宮司は、幕府により神宮を追われました。その窮地を救ったのが水戸藩主徳川光圀でした。史料調査を通じて結ばれた二人の友情と、新天地の常陸小川における大宮司家のその後をたどります。

    演題:
    「香取大宮司と徳川光圀」
    日時:
    令和5年3月12日(日)14:00~15:00
    講師:
    飛田 英世(当館資料調査専門員)
    会場:
    茨城県立歴史館
    定員:
    100名(事前予約、要入館券)
  • リレー講座 ③

    利根川下流域に広がる水郷地域は、美しい景観・史跡・観光スポットなどが集積する魅力あふれる地域です。ここでは、当館の行政資料だからこそ見えてくる昭和以降の当地の出来事について確認していきます。

    演題:
    「行政資料にみるちょっと昔の水郷」
    日時:
    令和5年3月19日(日)14:00~15:00
    講師:
    小倉 朗(当館学芸課長)
    会場:
    茨城県立歴史館
    定員:
    100名(事前予約、要入館券)
  • リレー講座 ④

    鯰絵とはどのようなものか、鹿島への信仰とどのような関係があるのか、また、幕末の大地震直後に大流行した鯰絵は、当時どのような役割を果たしたと考えられるのか、本展覧会に出陳される資料を中心に見ていきます。

    演題:
    「鯰絵と鹿島信仰」
    日時:
    令和5年4月16日(日)14:00~15:00
    講師:
    森戸 日咲子(当館学芸員)
    会場:
    茨城県立歴史館
    定員:
    100名(事前予約、要入館券)
  • リレー講座 ⑤

    古墳時代、香取海沿岸を地盤とした豪族について、彼らが築いた古墳を基にその動静を紐解くとともに、副葬品や埴輪、祭祀に使われた道具から、内海が地域の交流に果たした役割について考えていきます。

    演題:
    「古墳時代の内海」
    日時:
    令和5年4月23日(日)14:00~15:00
    講師:
    小澤 重雄(当館首席研究員)
    会場:
    茨城県立歴史館
    定員:
    100名(事前予約、要入館券)